刺すような日差しも、呼吸を押し返してくるような湿気も、
そして背中に浴びるせ蝉の鳴き声も。
緑の大海の大きな波打ちといっしょに、夏が私を飲み込んでくる。


一通り草刈りをしてから、別の畑に行き、軽トラから下りると

「おーい」と声が追いかけてきた。
振り向くと、畑向こうの家の窓からひょっこり顔を出している橋場さんだった。


「おい、スイカ食わねえかい」



いまにも長靴の底から地面に溶けてしまいそうで、
正直このまま家に帰ろうか、もう少しがんばってみようか悩んでいたので、とても嬉しかった。


DSC_2741

玄関に二人で並び、真っ赤なスイカをかじった。
かじるたびにスイカから溢れるしずくが、喉をうるおす。


玄関の向こうはまぶしく、陽はかんかんと地面を打ち、
それとは正反対の薄暗い玄関で、ぽつりぽつりとおしゃべりをした。


ぽつりぽつり、言葉を交わすうちに熱気をまとっていた肌も落ち着いてきた。
風が通る。


これを、やさしい時間と言うようだった。



夏がぽつり、ぽつり進むなかで、
少しずつ空が、秋のよそおいを始めた。


いつのまにか、赤とんぼが空いっぱい飛ぶようになった。