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十日町市の冬は世界一美しい。
燃え盛った季節を、全て包み込む雪。音と色がなくなり、しんとした山のなかにいると、雑多な世界から切り取られたもう一つの世界に来たような錯覚になります。夜になると、雪原は星屑を撒いたようにきらめき、自分の足音と、吐息しか聞こえない夜道を歩くのが、好きでした。
雪を走るうさぎや狸の足跡、ひとの足跡、家から立ち上る薪ストーブのおだやかな煙、どれも存在が際立ち、だれかの気配が心をあたたかくさせます。街ではなく、山地だからこそ、雪のよさを感じれるのかもしれません。

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ただ、太陽が出る日は少なく、移住当初、分校で一人住んでいた私はやっぱり寂しくて、あっという間に太ももまで積もる雪のなかを、ひたすらひたすら除雪して、どんどん気持ちもズーンとなり、鬱々してくる毎日でした…。
かと言って、自分で決めた道だから、弱音なんか吐いてちゃダメだ!(><)
それでもふと涙が……そんなかんじでした。。

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そんなときに、橋場さんのうちに、ある用事で寄ったときのこと。
「おい、お茶のんでかねかい」

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おうちに入るとあったかい部屋と、あったかいお茶と、お菓子。
何気ない話がとてもたのしい。


ふと、こんなことを聞いてみた。
「こんなに雪が降って、あぁ嫌だとか、鬱々しませんか」


「雪なんて、あぁ降れ降れって思ってればいい。
一生降るわけじゃないんだから。いつかやむんだから、降らせておけばいいんだよ」



そうか。


その、目の前に起きること全てを、あるがまま受け入れる姿に、なんだかぐっときました。自分ではどうにもできないことがある。けれど、どうにもならないなら、それに身を委ね、ただ軽やかに日々を滑り過ごしてゆく。ただ、それだけのことだった。

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お茶のみの文化は、季節問わず、どのおうちにもありました。
地域の人たちに「お茶のんでかねかい」「コーヒーのみに来ない?」そんな声をたくさんかけていただき、そしてお茶とお菓子を食べながら、一年を振り返り、そして春に思いを馳せて過ごした時間は、雪国の人たちの、冬の過ごし方のようでもありました。 


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おどろくほど柔らかく、軽やかな砂地の土は、このなんにもないって言われる山地の、池谷に与えてくれた宝物のようでした。
さつまいもなど芋類や、大豆をとても甘く育ててくれます。

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そして、そのさつまいもをじゃんんじゃん作り、売っていたのが橋場さん夫婦でした。
名売り手だったおかあさんは、私がさつまいもを始めた翌年に亡くなってしまい、 おとうさんが規模を少なくした分、畑を借りてさつまいもを栽培しています。



雪国のひとたちのくらしは、全て冬に向かって進んで行きます。
保存食、雪囲い、冬に食べるやさい…



そんなとき、このさつまいもも、「お茶のみ文化」が続くよう、
そして、「お茶のみ」する口実になって、
それを囲んで、一緒にあたたかい時間を過ごし、春を待つ雪の日をすこし特別にしてくれるようなお菓子になってほしい。


雪の日は、干し芋もって、だれかのおうちへ。

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「お土産」ということばが、「土から産まれる」と書くように、
土から産まれたものが、あたたかい気持ちを乗せて、
ひとからひとへ、 渡ってゆくように。



そんな思いを込めて、さぁパッケージづくりです! 
12月下旬からお届けできるように、がんばります!